「株式投資を始めたいけど、株の種類が多すぎて何から手をつけていいか分からない…」

そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。実際、株式市場には数千もの銘柄があり、それぞれ異なる特徴を持っています。

しかし、株の「分類法」を理解すれば、この複雑に見える株式市場も体系的に整理できます。今回は、投資初心者から中級者まで役立つ「株の種類と投資の全体マップ」を、8つの分類法で完全解説します。

この記事で分かること

  • 株式の8つの分類法と特徴
  • ETF・REITの基本的な仕組み
  • 投資目的別の株の選び方
  • よくある誤解と正しい理解

1️⃣ 法的な種類(権利の違い)

まず最初に理解すべきは、株式の「法的な種類」です。これは株主としてどのような権利を持つかを決める重要な分類です。

種類 概要
普通株式
(ふつうかぶしき)
最も一般的な株。配当を受け取れ、議決権(会社の意思決定への投票権)もある。
優先株式
(ゆうせんかぶしき)
配当や会社清算時の財産分配で優先される株。ただし議決権が制限される場合がある。
デュアルクラス株式
(Dual-Class Shares/デュアルクラス・かぶしき)
同じ会社でA株・B株のように議決権の重さを分ける設計。創業者が経営権を維持したい時によく使う。
無議決権株
(むぎけつけんかぶ)
配当は受け取れるが、議決権を持たない株。安定的に収益を狙いたい投資家向け。

最も一般的な株。配当を受け取れ、議決権(会社の意思決定への投票権)もある。

配当や会社清算時の財産分配で優先される株。ただし議決権が制限される場合がある。

Dual-Class Shares/デュアルクラス・かぶしき

同じ会社でA株・B株のように議決権の重さを分ける設計。創業者が経営権を維持したい時によく使う。

配当は受け取れるが、議決権を持たない株。安定的に収益を狙いたい投資家向け。

👉 トレードオフ(trade-off/トレード・オフ)は「議決権の重さ」と「配当・資産の優先順位」。

2️⃣ 上場市場・国による分類

株式がどこの市場に上場しているかによって、取引通貨や開示情報、取引時間が変わります。

区分 内容
国内株
(にほんこくないかぶ)
東京証券取引所の3市場
プライム=大企業、スタンダード=中堅、グロース=成長企業
海外株
(かいがいかぶ)
米国(NYSE・NASDAQ)、欧州、アジアなど
為替リスクあり、配当課税が複雑
ADR
(American Depositary Receipt/エー・ディー・アール)
海外企業の株を米国市場で売買できる預託証券
ドル建てで取引、為替手数料削減
中国株
(ちゅうごくかぶ)
A株(人民元)・H株(香港ドル)・N株(米ドル)
政治リスク・規制リスクに注意

国内株(にほんこくないかぶ)

国内市場

東京証券取引所の3市場

プライム=大企業、スタンダード=中堅、グロース=成長企業

海外株(かいがいかぶ)

海外市場

米国(NYSE・NASDAQ)、欧州、アジアなど

為替リスクあり、配当課税が複雑

ADR

預託証券

American Depositary Receipt/エー・ディー・アール

海外企業の株を米国市場で売買できる預託証券

ドル建てで取引、為替手数料削減

中国株(ちゅうごくかぶ)

中国市場

A株(人民元)・H株(香港ドル)・N株(米ドル)

政治リスク・規制リスクに注意

👉 「どこに上場しているか」で通貨・開示情報・取引時間が変わる。

3️⃣ 規模(時価総額による分類)

企業の規模は、株価の安定性や成長性を判断する重要な指標です。

分類 時価総額目安 特徴
大型株
(おおがたかぶ)
3,000億円以上 安定性が高い、配当利回りが魅力、値動きは穏やか
中型株
(ちゅうがたかぶ)
300億円〜3,000億円 成長性と安定性のバランス、適度な値動き
小型株
(こがたかぶ)
300億円未満 高成長の可能性、値動きが大きい、リスクも高い

大型株(おおがたかぶ)

大型

時価総額目安:3,000億円以上

特徴:安定性が高い、配当利回りが魅力、値動きは穏やか

中型株(ちゅうがたかぶ)

中型

時価総額目安:300億円〜3,000億円

特徴:成長性と安定性のバランス、適度な値動き

小型株(こがたかぶ)

小型

時価総額目安:300億円未満

特徴:高成長の可能性、値動きが大きい、リスクも高い

👉 「規模 = ボラティリティ(Volatility/価格変動の大きさ)」の目安にもなる。

4️⃣ セクター(業種別分類)

業種による分類は、景気の影響度や成長性を理解するのに重要です。

GICS(ジックス/Global Industry Classification Standard)での11セクター

情報技術
通信サービス
ヘルスケア
一般消費財
生活必需品
エネルギー
金融
資本財
素材
公益
不動産

景気との関係による分類

分類 特徴 代表例
ディフェンシブ株
(Defensive/ディフェンシブ)
景気に左右されにくい、安定した業績 食品、医薬品、電力・ガス、通信
シクリカル株
(Cyclical/シクリカル)
景気の影響を受けやすい、業績の波が大きい 自動車、鉄鋼、化学、建設、銀行

ディフェンシブ株

安定型

Defensive/ディフェンシブ

特徴:景気に左右されにくい、安定した業績

代表例:食品、医薬品、電力・ガス、通信

シクリカル株

景気敏感

Cyclical/シクリカル

特徴:景気の影響を受けやすい、業績の波が大きい

代表例:自動車、鉄鋼、化学、建設、銀行

👉 景気が良いと伸び、不況で落ちる業種を「シクリカル株」と呼ぶ。

5️⃣ 投資スタイル・性質による分類

投資家の目的や戦略によって、株式は異なる特徴で分類されます。

スタイル 特徴 狙い
グロース株
(Growth/グロース)
売上・利益の成長率が高い、PERが高め 株価上昇による値上がり益
バリュー株
(Value/バリュー)
業績に対して株価が割安、PERが低め 割安解消による株価上昇
高配当株
(こうはいとうかぶ)
配当利回りが高い(3%以上が目安) 安定した配当収入
配当成長株
(はいとうせいちょうかぶ)
配当を毎年増やし続けている 配当の成長による長期的な収入増

グロース株

成長重視

Growth/グロース

特徴:売上・利益の成長率が高い、PERが高め

狙い:株価上昇による値上がり益

バリュー株

割安重視

Value/バリュー

特徴:業績に対して株価が割安、PERが低め

狙い:割安解消による株価上昇

高配当株(こうはいとうかぶ)

配当重視

特徴:配当利回りが高い(3%以上が目安)

狙い:安定した配当収入

配当成長株

配当成長

はいとうせいちょうかぶ

特徴:配当を毎年増やし続けている

狙い:配当の成長による長期的な収入増

👉 同じ会社でも相場状況で「グロース⇄バリュー」に見え方が変わる。

6️⃣ 流動性・売買単位による分類

投資に必要な資金や売買のしやすさに関わる分類です。

分類 特徴 メリット・デメリット
単元株
(たんげんかぶ)
100株単位での売買(日本の標準) ○ 流動性が高い × まとまった資金が必要
単元未満株
(たんげんみまんかぶ)
1株から購入可能(ミニ株・S株など) ○ 少額投資可能 × 手数料が割高、流動性が低い
値がさ株
(ねがさかぶ)
1株あたりの価格が高い(1万円以上など) ○ 安定性が高い × 投資額が大きくなる

単元株(たんげんかぶ)

標準単位

特徴:100株単位での売買(日本の標準)

メリット・デメリット:○ 流動性が高い × まとまった資金が必要

単元未満株

少額投資

たんげんみまんかぶ

特徴:1株から購入可能(ミニ株・S株など)

メリット・デメリット:○ 少額投資可能 × 手数料が割高、流動性が低い

値がさ株(ねがさかぶ)

高価格

特徴:1株あたりの価格が高い(1万円以上など)

メリット・デメリット:○ 安定性が高い × 投資額が大きくなる

👉 必要資金や売買のしやすさ(流動性)に影響する。

7️⃣ ライフイベント・企業フェーズでの分類

企業の成長段階や特別なイベントによる分類です。

分類 概要 投資の注意点
IPO株
(Initial Public Offering/アイ・ピー・オー)
新規上場株式 値動きが激しい、情報が限定的
PO株
(Public Offering/ピー・オー)
既上場企業の新株発行・売出し 株価の希薄化に注意
自社株買い銘柄
(じしゃかぶがいめいがら)
企業が自社株を市場から買い戻し 株価押し上げ効果、株主還元の姿勢

IPO株

新規上場

Initial Public Offering/アイ・ピー・オー

概要:新規上場株式

投資の注意点:値動きが激しい、情報が限定的

PO株

公募増資

Public Offering/ピー・オー

概要:既上場企業の新株発行・売出し

投資の注意点:株価の希薄化に注意

自社株買い銘柄

株主還元

じしゃかぶがいめいがら

概要:企業が自社株を市場から買い戻し

投資の注意点:株価押し上げ効果、株主還元の姿勢

👉 こうした「資本政策イベント」は短期的な株価変動のドライバーになる。

8️⃣ テーマ・ラベルでの呼び方

市場で注目されるテーマや話題による分類です。

ESG(イー・エス・ジー/環境・社会・ガバナンス)投資
サステナブル
AI関連
インフラ
防衛
国策

👉 話題性で注目されやすいが、実績・利益・指標(バリュエーション)を必ず確認。

⚠️ よくある誤解まとめ

株式投資でよく見られる誤解を正しい理解とともに整理しました。

❌ 誤解:「ETF/REITは株そのもの」

間違い

正しい理解:どちらも「投資の器」。ETF=株の詰め合わせ、REIT=不動産投資信託。

❌ 誤解:「優先株は安全」

間違い

正しい理解:「配当順位が高い」だけで価格変動リスクはある。

❌ 誤解:「株式分割で価値が増える」

間違い

正しい理解:分割は"切り分け"で、企業価値そのものは変わらない。

❌ 誤解:「配当が高い=得」

間違い

正しい理解:無理な高配当は減配リスク。利益・キャッシュフローを確認。

📦 ETF(イー・ティー・エフ/Exchange Traded Fund)

上場投資信託。株のように取引所で売買できる投資信託です。

代表例

  • S&P500 ETF:米国主要500社の株まとめ買い
  • 日経225 ETF:日本の225銘柄をまとめて買える

👉 投資信託より自由度が高く、リアルタイムで売買可能。

🏢 REIT(リート/Real Estate Investment Trust)

不動産投資信託。オフィス・商業施設・物流倉庫などに投資し、家賃や売買益を分配する仕組みです。

  • J-REIT(ジェイ・リート):日本の上場不動産投資信託。

👉 株のように売買でき、高配当なことが多い。

🎯 投資目的別・ざっくり選び方

最後に、投資目的に応じた株の選び方をまとめました。

成長を狙いたい

成長戦略

グロース株 × IT/ヘルスケア × 中小型株

安定・配当収入重視

収入戦略

ディフェンシブ株 × 高配当/配当成長株

世界分散・手間を減らしたい

分散戦略

ETF/投資信託で全世界・先進国・米国インデックスを軸に、余力で個別株を追加

💡 超要約

  • 株は「権利・上場市場・規模・業種・投資スタイル」で整理できる。
  • 株を理解するコツは、「誰の会社を」「どの立場(配当重視/成長重視)で」「どの市場で」買うか。
  • ETFやREITは株を"まとめ買い"できる便利な器。

株式投資は複雑に見えますが、この8つの分類法を理解すれば、どんな銘柄でも体系的に整理して考えることができます。

まずは自分の投資目的を明確にし、それに合った分類の株式から始めてみてください。そして、経験を積みながら徐々に投資の幅を広げていけば、きっと資産形成の大きな力になるはずです。

💬 株式投資について相談したい方へ

株式投資の始め方や銘柄選びなど、資産を『殖やす』方法について詳しく相談したい方はお気軽にご相談ください。あなたの状況に合わせた最適なアドバイスを提供します。

投資は自己責任ですが、正しい知識と戦略があれば、リスクを抑えながら資産を殖やすことができます。まずはお気軽にご相談ください。